今月の献立 〈第65回〉 2016年 5月 |
前月で抽選によって定めた第五期の試作発表サイクルが終わり、今回からは新たに第六期の定例発表会となった。期を新たにするにあたり、今回より会長ならびに運営委員から出されたテーマを6回に渡り、担当会員等が考え、発表するコーナーがスタート。第1回のテーマとして出されたのが「ワインに合う日本料理を考える」。また本定例会では大阪ワイナリー協会の煦芍長をゲストにお迎えし、国産ならびに大阪ワインの現状などを語っていただいた。 |
北野 博一さん 河内長野市「日本料理 喜一」 |
吉良 健太郎さん 貝塚市「料亭 深川」 |
柚野 克幸さん 西心斎橋「ゆうの」 |
北野 博一さんの前菜 | 吉良 健太郎さんの献立 | 柚野 克幸さんの献立 |
【総評】 料理そのものがワインに合うかどうか、は個人的な嗜好もある。ここで議論すべきは日本料理の基本的な手法をどうすればよりワインに適したものに変えられるか。今回の北野氏の前菜料理には様々な手法が取り込まれていた。生蓴菜とチアシードの冷製料理では、各会員から「出汁が非常に旨い。シャンパンには鰹出汁が合うことは知っていたが、こうした野菜ベースの出汁も再考したい」との声が聞かれた。中には「もう少し酸味があればより良かったのでは」といったコメントもあった。鮒寿司を使ったゼリー寄せ料理には、特に多くの意見や質問が集まった。「鮒寿司はいわば日本のチーズ、それをもう一度食材として考えてみたい」という評や、運営委員からは「全て発酵食品ではなく、未発酵なものといかに合わせるかを考えるとさらに良くなるのでは」という意見も出されていた。議論の最後に北野氏は、鯛を使った香味煎餅料理を取り上げ、「例えばワインにパンはつきものだが、では日本料理でそれに代わるものは何か。この前菜をヒントに皆で考えて欲しかったことはそこにもあります」との発言に会員は興味深く聞き入っていた。 |
【特別ゲスト】 「今、ワインの楽しみ方が大きく変わってきています。かつての贈答的なものから、自分が楽しむためのワインへと変わり、またワインそのものもボルドーなどの重厚なものではなく軽く楽しめる味わいのものへと移ってきています。ワインの文化は確かに西洋ですが、ワインにも地域性といったものがあるのです。日本の風土で栽培され醸造された国産ワインは、日本の料理と自ずとマッチするのはそのためです。さらに言えば、大阪のワインは大阪の料理に合うはずなのです。料理人が食材を選ぶように、日本の国産ワインを吟味してお客様に提供していただければ、大阪ワインは大阪料理と共に発展していけるものと信じております」。 |
撮影/藤澤 了 文/笹井良隆